ー 急性腰痛における腰椎・仙腸関節調整+筋肉の短縮改善+筋肉の滑走障害改善の施術報告ー
目次
■ 概要
- 対象:40代男性/営業職/腰部急性痛(発症から4日後に初診)
- 主訴:前屈動作時の激痛、腰部伸展不能、動作恐怖・不安
- 医療歴:整形外科受診歴あり/画像所見異常なし/NSAIDs処方のみ
- 社会背景:デスクワーク・車移動中心/業務・家族責任ストレスあり
■ 初診時の評価
- ROM(可動域):前屈不可、側屈・伸展ともに著明制限
- VAS(痛み評価スケール):8/10
- 疼痛部位:腰部L3〜5傍脊柱筋/腰仙移行部周辺
- 腰部以外の関連筋:大腿筋膜張筋・腸腰筋・腹横筋・横隔膜周辺に緊張
- 自律神経反応:手足冷感、呼吸浅く交感神経優位
■ 施術方針と実施内容(1回目)
⬛︎ 主訴に対して
- YNSA(山元式新頭鍼療法)施術
- 関節モビライゼーション
- トリガーポイントを考慮した全身マッサージ
- 筋群の短縮改善施術
⬛︎ 理学的調整
- 腹部深層筋(腸腰筋・腹横筋)への間接操作
- 骨盤帯安定化手技(仙腸関節調整)
- 呼吸誘導(横隔膜-胸郭弛緩)と副交感神経優位への誘導
- 末梢(足底・下腿)からの反射的神経緩和(体性-自律反射)
⬛︎ 使用技術:
- YNSA(山元式新頭鍼鍼法)
- 筋膜リリース(ストレインカウンターストレイン/間接法)
- 関節運動・滑走障害を改善させるマッサージ
■ 2回目・3回目の経過
2回目(6日後)
- VAS:3/10まで軽減
- 前屈は可、運転・階段昇降ほぼ可能
- YNSA:C点・D点反応継続。追加刺激と左側調整を実施
- 姿勢評価で骨盤前傾保持と左荷重傾向 → 姿勢補正指導
3回目(10日後)
- VAS:0〜1/10(再発恐怖感の訴えのみ)
- 痛みなし・日常生活制限なし
- トリートメント から メンテナンス提案へ移行
■ 考察
ぎっくり腰の急性期では、患部への直接介入は炎症・筋性防御反応を助長しやすい。
そのため、本症例では遠隔からの“神経−反射制御”を目的としたYNSAを初回より採用。
YNSAの有効性は、以下のような研究的知見に裏付けられる:
- 中枢性疼痛抑制系(PAG経路)を刺激する効果
- 迷走神経反射の活性化による副交感神経優位化
- 内臓-体性反射に基づく遠隔効果(特に腸腰筋緊張への反応)
さらに、徒手療法(筋膜調整+呼吸誘導)との併用で、
心理的安心感・不安軽減・呼吸パターン改善が加わり、“神経生理学的統合回復”が促進されたと考えられる。
■ 今回の症例の臨床的意義
- 患部に触れずして痛みの軽減が可能である
- 急性腰痛においても“脳−身体−感情”の連動を見据えた介入が重要
- YNSAは国家資格者が扱うべき高度な医学的技法であり、整体やリラクゼーション施術との一線を画す
【まとめ】ぎっくり腰の治療には、「腰だけ見ていたら」治らない。
急性腰痛は、単なる筋のトラブルではなく、
脳−身体−自律神経−心理の多層的な調整が求められる疾患です。
国家資格者による評価・判断・手技介入によって、
単なる“その場しのぎ”でない、本質的な回復のルートを提供します。
コメント