(深層筋鍼法シリーズ 第2回)
「ここ、そこ。そこなんです。」
肩や腰を触らせてもらうと、患者さんがピタッと指を止める場所があります。
押されると“痛気持ちいい”を通り越して、ズンと深く響く。なのに、表面をいくら揉んでも、なぜかそこだけ残る。
この“残る一点”を、私たちは現場でよく 「コリの芯」 と呼びます。
ただし、最初に大切な前提です。
「芯=何かの塊が入っている」わけではありません。
むしろ芯とは、身体が防御として作った “ブレーキの焦点” に近い概念です。
芯とは「硬い場所」ではなく「戻る場所」
初心者の方が誤解しやすいのはここです。
- コリ=硬い
- 芯=もっと硬い塊
…と思われがちですが、現実はもう少し“神経っぽい”。
芯は多くの場合、
「そこに触れると身体が反射的に守りに入るポイント」
になっています。
だから、表面を広く緩めても、
身体は最後にそこへ戻って、またブレーキをかけます。
たとえるなら「折れ曲がったホース」
肩全体を揉むのは、ホース全体を温めるようなもの。
一時的に水は流れやすくなる。
でも、ホースが一点で折れ曲がっていたら、そこがボトルネックのまま。
結局、詰まりは戻ります。
芯はこの“折れ曲がり点”に近い。
なぜ「面」ではなく「点」なのか
ここが今回の核心です。
身体の緊張は、広い面で起きているようで、
実は最終的に一点へ集約されることがあります。
- 仕事姿勢で同じ筋が引っ張られ続ける
- 関節の動きが悪く、代わりに別の筋が頑張る
- 呼吸が浅く、肩がすくみ続ける
- 過去の痛みの記憶で、そこだけ警戒が残る
この“負担の集約点”が芯です。
そして重要なのは、芯は「悪者」ではなく、
身体が壊れないために作った安全装置でもあるということ。
だからこそ、雑に刺激すると、さらに固く守ろうとします。
「点で届く」と何が変わるのか
多くの人が体験する変化は、こうです。
- その場で呼吸が入りやすくなる
- 首が軽く回る/腕が上がる
- 立った時の重心が戻る
- “抜けた”感じが出る(これが大事)
ここで言う「抜けた」は、
単に柔らかくなったのではなく、
余計な力(防御)が解除された感覚です。
【専門メモ】芯は「組織」+「神経」の合流点になりやすい
芯は、筋肉・腱・骨際・筋膜などの“物理的な硬さ”だけでなく、
痛みや緊張を増幅する神経の反応が重なることで、
局所に“焦点”が生まれやすい。
つまり芯は、構造と反射の交差点です。
「点で届かない」まま揉み続けるとどうなる?
これ、耳が痛い話かもしれません。
点に届かないまま「面」で頑張ると、
身体は賢いので、別の場所で帳尻を合わせます。
- 肩が抜けない → 腰が反る
- 腰が抜けない → 膝が頑張る
- 股関節が固い → 足首がねじれる
結果、“痛い場所が移動する”ことが起きます。
「昨日は首、今日は腰、来週は膝」
こういう人は、芯が引っ越しているのではなく、
芯に繋がる連鎖が残ったままの可能性があります。
深層筋鍼法が狙う「芯」は、どう違うのか
深層筋鍼法の特徴を一言で言うなら、
芯を“点”として捉える精度
そして
深部(骨際・深層筋・腱付着部)まで届かせる設計
です。
ただし誤解しないでほしいのは、
「深ければ効く」という話ではありません。
大切なのは
“必要な深さに、必要な角度で、必要な一点に”
という精度。
ここが曖昧だと、
- 効かない
- 逆に防御が増える
- その場で変わっても戻りやすい
が起こります。
そして最重要:芯が変わったら「動き」で固定する
芯に届いて身体が変わった時、
ここで終わると、もったいない。
なぜなら身体は、
慣れた動きに戻るのが得意だから。
そこで当院は、芯を整えたら最後に
動作リカバリー(再学習) を必ず入れます。
- 肩がすくまない腕上げ
- 胸郭が動く呼吸
- 腰で反らない立ち方
- 股関節から曲げるしゃがみ方
つまり、
芯を外す → 動きを作る → 定着
この順番が「その場しのぎ卒業」の本体です。
今日からできる「芯っぽさ」セルフチェック(安全な範囲で)
※痛みが強い方は無理せず、医療機関の確認が必要な場合もあります。
1)押すと“そこだけ”違う点がある
周りは痛気持ちいいのに、
一点だけズンと深い、息が止まるような点。
2)動きの“引っかかり”が一点で止まる
腕を上げると、ある角度で止まる。
振り向きが、ある方向だけ硬い。
3)深呼吸すると、その点が邪魔をする
吸うと肩がすくむ。吐けない。
胸が動かない。
この3つが揃う人は、
「面」より「点」を扱う価値があります。
鍼に懐疑的な方へ:信じなくていいです
鍼は宗教ではありません。
当院は「信じてください」ではなく、こうします。
- 施術前に動きを測る(腕上げ、振り向き、立位など)
- 芯に介入する
- 施術後に同じ動きを再チェック
- 変化が出たら理由を説明し、出なければ方針を変える
“納得できる形”で進めます。
まとめ:芯は「深さ」ではなく「焦点」
- コリの芯は、塊ではなく ブレーキの焦点
- 面で緩めても、焦点が残れば戻る
- 点で届くと「抜ける」「呼吸が入る」「動きが変わる」
- 仕上げは 動作の再学習。ここで定着が決まる
