「深層筋鍼法(しんそうきんしんぽう)って、普通の鍼と何が違うんですか」
ご来院された方から、よくいただく質問です。
お答えするときにいつも思うのは、この手技のいちばんの特徴は「特別な何か」ではなく、どこに届かせるかという一点にあるということです。
この記事でお伝えすること
深層筋鍼法(DMA:Deep Muscle Acupuncture)は、表層ではなく深い層の筋肉に届く刺鍼を体系化した手技です。なぜ手では届きにくいのか、鍼で何をしているのか。施術者の視点からご説明します。
札幌市中央区で施術をしている湯川です。施術歴は33年になります。この記事は、深層筋鍼法のページでは書ききれない「なぜそう考えるのか」の部分をまとめたものです。あくまで施術者としての見立てであり、変化の出方には個人差があります。
「深い層」とは、どこのことか
筋肉は一枚ではありません。
皮膚のすぐ下から骨の近くまで、何層にも重なっています。そして層と層のあいだは、うっすらとした膜で仕切られ、互いに滑りながら動いています。
手が届きやすい層
体表に近い層です。指で押せば、そこに何かがあると分かります。
肩を揉んでもらったときに「効いている」と感じるのは、多くの場合この層です。
手が届きにくい層
骨のすぐ近くにある層です。関節を安定させたり、姿勢を保ったりする役割を担っています。
この層には、体表から押しても力が集まりにくいという性質があります。理由は単純で、途中の組織がクッションのようにはたらいて、力が広がってしまうからです。
強く押せば届くのではないか、と思われるかもしれません。ただ、強くするほど途中の層への負担が増えるだけで、狙ったところに集まる力はそれほど変わらない——というのが、手で触れ続けてきた実感です。
なぜ「戻る」のか
Point ── 表面がゆるんでも、その奥が硬いままだと、表層はまた引っ張られやすくなります。
ほぐした直後は楽になる。でも翌朝には、もう重い。
この経験をお持ちの方は、とても多いと思います。
これを「揉み方が足りない」「自分の身体が特別に硬い」と受け取ってしまう方もいらっしゃいますが、私はそう見ていません。
届いている層と、硬さが残っている層が違うだけではないか。そう考えるほうが、実際の経過とよく合います。
深い層に緊張が残っていると、その上にある表層の筋肉は引っ張られた状態になります。ほぐして一度ゆるんでも、引っ張る力が残っていれば、また硬くなりやすい。
「戻る」という感覚の背景には、この構造があるのではないかと考えています。
鍼だからできること
では、なぜ鍼なのか。
理由は、力を途中で分散させずに、狙った深さまで進められるからです。
非常に細い鍼は、途中の層を通り抜けていきます。手のように面で圧をかけるのではなく、点として深いところに届く。この違いが、深い層にはたらきかけるうえで意味を持ちます。
「深く刺す」ことが目的ではない
ここは誤解されやすいところです。
深層筋鍼法は「深く刺す鍼」ではありません。硬さの中心と考えられる一点に届かせるための手技です。
場所が定まらないまま深く進めても、狙ったところには届きません。ですから、この手技でいちばん時間をかけるのは、実は鍼を刺す前の段階です。
探す・届かせる・確かめる
Point ── この3つを繰り返すことが、深層筋鍼法の骨格です。
1. 探す
指で丁寧に触れていきます。
「このあたりが硬い」という広さから、「ここ」という一点まで絞り込んでいく作業です。
硬さには質があります。表面がこわばっているのか、奥にしこりのような芯があるのか。触れ方を変えながら、その違いを読んでいきます。
2. 届かせる
絞り込んだ一点に向けて、鍼をゆっくり進めます。
急がないことが大切です。ゆっくり進めるからこそ、途中の組織への負担が少なく、思ったほど痛みを感じないという方が多くいらっしゃいます(感じ方には個人差があります)。
鍼が硬さの中心に届くと、「ズーン」という独特の響きを感じることがあります。これは痛みとは異なる感覚で、「痛気持ちいい」と表現される方もいらっしゃいます。
3. 確かめる
鍼のあと、もう一度手で触れます。
狙った層がゆるんだか。組織が滑らかに動くようになったか。左右の差はどうか。
残っていれば、その場で追加するか、次回に持ち越すかを判断します。
この「探す → 届かせる → 確かめる」を繰り返していくのが、深層筋鍼法の進め方です。
「効きそうな鍼」ではなく「説明できる鍼」を
深層筋鍼法は、なおし家鍼灸院・角谷敏宜(かどや としのぶ)院長が体系化された手技です。私は角谷院長に師事し、札幌でこの手技による施術を行っています。
この手技を学んで、いちばん大きかったのは技術そのものより、考え方でした。
なぜその場所に鍼をするのか。なぜその深さなのか。それを解剖学的な構造から説明できること。
「なんとなく効きそうだから」ではなく、「この構造だからここに」と言えること。これが、再現性のある施術につながっていくのだと思います。
同じ場所に、同じ理由で、同じように届かせられること。地味な話ですが、ここが手技の芯だと考えています。
当院での組み立て
当院の施術は、そのほとんどが深層筋鍼法です。
主 | 深層筋鍼法── 施術の中心です。触診で絞り込んだ一点へ鍼を届かせ、再び手で確かめる。この流れを繰り返します。
→ 深層筋鍼法について詳しく
補 | YNSA(山元式新頭鍼療法)── 頭部の反応点に細い鍼を浅く用いる手技です。神経系の面が関わっていると考えられる場合に組み合わせることがあります。お身体の状態に応じて用いるかどうかを判断しており、深層筋鍼法のみで組み立てることもあります。
→ YNSAについて
確認 | あん摩マッサージ指圧── 鍼の前後に数分、手で触れて状態を確かめます。揉みほぐすための施術ではなく、施術の精度を保つための工程です。マッサージのみの施術は行っておりません。
→ 当院での手技の役割
ご相談の多い症状
表面のケアでは届きにくい層が関わっていると考えられる症状で、多くご相談をいただいています。
肩こり・五十肩/スマホ首・首こり/慢性腰痛・坐骨神経痛/股関節痛・膝痛/パニック障害/スポーツ障害/脳卒中後遺症
症状の重さや続いてきた期間により、変化の出方には個人差があります。ご自身の症状が対象になるか迷われる場合は、お気軽にお尋ねください。
なお、強い痛みが続く場合、しびれや脱力がある場合、発熱をともなう場合などは、まず医療機関の受診をご検討ください。当院は診断を行うことができません。
経過について
「何回で良くなりますか」というご質問をよくいただきます。
正直にお答えすると、お約束はできません。
続いてきた期間、お仕事や生活での負荷、姿勢のクセ。関わる要素が多く、経過には大きな個人差があります。
当院では、5〜10回を目安に一度経過を振り返り、そのつど方針を調整していくという進め方をしています。初回のカウンセリングで、いまの状態と進め方についてご説明します。
おわりに
「揉んでも戻る」を何年も繰り返してこられた方ほど、ご自身の身体をあきらめかけていることがあります。
けれど、もしその背景が「届いている層の違い」であるなら、まだ考えられることは残っているかもしれません。
深層筋鍼法は、魔法の技術ではありません。手が届きにくいところへ、鍼で届かせる。それだけの、地道な手技です。
ただ、その「それだけ」が、これまでとは違う入り口になることもあります。
まずは、いまのお身体の状態を拝見させてください。
── ご予約・ご相談はLINEから ──
「こんな症状でも相談できますか」だけでも大丈夫です。
お電話:011-577-1648(完全予約制)
はじめての方 合計150分 ¥13,000(税込)/ 施術コース・料金を見る →
私は医師ではありません。奇跡の治療もできません。ただ、戻りを繰り返してきた身体と、丁寧に向き合っていきます。
📎 関連ページ
深層筋鍼法とは / YNSA(山元式新頭鍼療法) / 当院での手技の役割 / 施術コース・料金 / よくあるご質問
この記事を書いた人
湯川 研一(ゆかわ けんいち)
ゆかわ鍼灸マッサージ治療院 院長。はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師(国家資格3種保有)。施術歴33年、延べ4万人以上の施術実績。なおし家鍼灸院・角谷敏宜(かどや としのぶ)院長に師事。深層筋鍼法施術師・YNSA施術師。札幌市中央区にて、長引く肩こり・腰の痛み・パニック障害・脳卒中後遺症を中心に施術を行っています。
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